調査書は生徒へのラブレター

校長 片山 造

就職・進学に向け、3年担任は生徒一人ひとりに調査書を作成する。そこには、成績や出欠状況とともに担任の所見欄があり、その生徒の人となりや頑張りが記載されている。

大学に入り部屋の掃除をしていたところ出願せず手元に残った調査書を見つけた。3年間、部活動と行事以外に努力もせず成績は散々だった。担任の先生からは誉められたこともない。どうせ、ろくでもないことが書かれているに違いないと期待もせず開封してみた。そこにはこんなことが書いてあった。(注)調査書は開封厳禁です。

(概略)3年間、先頭にたって部活動や学校行事に全力で挑みやりきった。学習面も含め、無限の可能性を秘めており、将来有望な人物であることを確信する。

予想外の内容に戸惑いながら、(ありがとう先生)とつぶやいていた。とにかく嬉しかった。調査書は、ひとりの教師が、ひとりの生徒を思い、過去と現在と未来をつないでいくラブレターだと感じた。

 気がつけば教師になっていた。調査書の時期がくるたび、このことを思い出す。果たして、今の私はその先生の期待に応えることができる人物になり得ているだろうか?思案しながら(もっと愛を!)と先生方の調査書を添削している。