「先生、今までありがとうございました。先生からいただいた言葉は、僕の宝物です。」これは卒業式の後、さんざん世話を焼かせてくれた生徒が頭を下げながら言ってくれた言葉。その態度はとても立派で職員室にいたまわりの先生から思わず拍手も出たほどでした。そして私自身、嬉しくて人目もはばからず泣いたことも覚えている。その一方で、自分が彼にどんな言葉を話したのかを思い出すことができない。
忘れられない言葉がある。一方で、なぜか折に触れて思い出される言葉もある。なぜ忘れられないのか?(よくよく考えてみると)それは紛れもなく、相手から届けられた思いを受け止め、こころのどこかに蓄えていたのだと思う。
一昔前なら、(心に響く言葉)。最近では(心に刺さる言葉)とでも言えるだろうか。できるなら、じんわりと手間暇かけて(心にしみる言葉)を体感してみたいもの。
あれから30年近い歳月が経過した。彼と話す機会があれば、(少し恥ずかしいけれど)私が彼に何を語ったのか聞いてみようと思っている。