「なんなん!」からの「なんなん?」

校長 片山 造

 福泉高校でのこと。クラスにとびきり話が聞けず、なにかにつけ私の言動につっかかってくる生徒(仮称A)がいた。なにか声をかけようものなら、「なんなん!(ほっといてよ)」と返ってくる。それ以上、話が入っていく余地すらない。(どうしたものか)と思案した。同じ中学からきた生徒によると、Aは中学校時代、先生から怒鳴られてばかりいたとのこと。(あんなだけど、ホントはAとても優しくていい奴だよ)という言葉が心に残った。

 それから、私はAと話をするため、教室である作戦を実行し続けた。その作戦とは、あえてAの近くで生徒たちと輪を作り話すこと。昼休みの教室で、Aはいつも机に伏せて寝ていた。そのまわりで、生徒たちとあんなことこんなことを話す。そのうち、Aは笑い声や盛り上がりに反応して、寝返りを打つようになった。そして数日後、大爆笑が起きた次の瞬間、「なんなん?(教えてよ)」ついに、Aが輪に入ってきた。私を除いた生徒たちは、そんな作戦を知るはずもなく、Aの突然の参入に驚いた様子だった。私はといえば、(しめしめ)。

それから、Aとのやりとりは(なんなん!半分、なんなん?半分)になった。「なにかに反発する」「なにかに関心を持つ」どちらの(なんなん)も人として大切なこと。Aは今でも(なんなん)と言いながら過ごしているのだろうか。懐かしくもありほほえましくもある思い出である。05143.jpg