責任と絆

「人間であることは、とりもなおさず責任をもつことだ。」

 これは、フランスの飛行家であり、『星の王子さま』の作者でもあるサン=テグジュペリが『人間の土地』で表現した言葉。誰もがこの言葉を聞いて、(もちろんそうだ)と思う。しかし、(責任)という彼の言葉には、我々の想像をはるかに上回る思いが込められていた。

『人間の土地』(概要)

 雪のアンデス山脈に不時着した郵便飛行機のパイロットは、雪の中を5日間歩き通し、最後の力をふりしぼって、自分の遺体を発見してもらうために谷間から岩角まではいあがる。自分の死亡が確認されなければ、残された妻に保険金がおりないからである。彼は「もう少しだけ心臓が動いてくれ」と心で叫びながら、ただ自分の遺体を発見してもらうためだけに登り続ける。愛するものへの責任を果たすこと、それは愛するものとの絆に生きることであり、その絆に生きることが人に人生を最期まで生き抜く勇気をあたえ、自己を支えてくれる。

 年を取ったからだろうか。何度、読み返しても、じんわりとこみ上げてくる何かがある。自分が(何を残すことができるか)これは、人にとって大きな命題でもある。そんなことを考えさせてくれる話だった。