はじめてのこと

 小学校の帰り道、育ち盛りの私は常にお腹がすかせていた。学校帰りには、行きつけ?の店で(たこ焼きや豚まん)を買って友達と食べると決めていた。

 ある日の帰り道、いつも以上に腹ペコだった。僕たちは、お腹を満たすために、迷うことなく行きつけの店に向かった。しかし、その日に限って、その店がなぜか閉まっていた。(はあーっ)という溜め息とともに、空腹は耐え難いものになっていた。そんな時、友だちが言った。「そうや、ゲームセンターの隣にうどんの自販機あったはず。そこまでいこう!」友人と二人で、坂道を駆けあがり自販機の前まで辿り着いた。果たして、うどん・そばの自販機には故障中の張り紙がされていた。わたしと友人は、思わずその場にへたり込んでしまった。ふと、横を見ると、(カップヌードル)の自販機があった。テレビのCMではみていたが、二人ともそれを食べたことはなかった。ふたりで有り金をかき集め、なんとか一人分の購入金額をクリアすることができた。ここまではよかったが、さて、作り方が分からない。

 まわりを見渡したが、店に人がいるわけでもない。購入して食べる人が現れるまで、待つことにした。いつの間にか、空腹感も不思議とおさまっていた。30分は待っただろうか。いかした車で乗りつけたお兄さんたちがカップヌードルを購入、お湯を入れ、食べ始めた。友だちと私は全神経を集中させ、気づかれないようにお兄さんたちの動きをみていた。そして、お兄さんたちがいなくなったのを確認してから、カップヌードルを購入し、お湯を入れ、友だちと食べた。

 (うまかった)(なんだこれは)とがむしゃらにかきこみ、最後の一滴まで汁を飲んだ。今では当たり前に食べているカップ麺。時々、カップ麺を食べながら、その時の景色と友だちの笑顔を思い出す。