78期課題研究(生物)D班です。私たちは、「茨木高校にある標本の、忘れられつつある重要性」を再認識してもらうため、「ニホンアシカの同定について」をテーマに研究発表を行いました。
課題研究全体発表会の様子
「同定」とは、自然科学で分類上の所属を決定することです。実は、茨木高校のラベルには「オットセイ」と書かれているが、ニホンアシカだと思われる標本があります。そして、この標本を「オットセイではなく、他のアシカでもなく、ニホンアシカである!」と、確定させることには、非常に大きな意味があります。
ニホンアシカは形態や生態が研究される以前に、ほとんど絶滅してしまったため、情報がとても少ない種です。さらに、ニホンアシカであると公式に同定された剥製標本は世界に18体しかありません。またニホンアシカは1975年を最後に日本海で目撃されて以来、50年間生存情報がないため、今年、絶滅種に認定をされるかもしれません。ニホンアシカの標本が見つかり、調査、研究が進むことが、とても大きな成果につながるのです。
⽣徒が3D画像で撮影した本校のニホンアシカと思われる剥製標本
https://scaniverse.com/scan/5v6w3nxopqxxqbxc
ここから実際に、どのようにニホンアシカの同定を行ったのか簡潔に紹介します。この研究は、国立科学博物館の甲能直樹先生、岸和田高校の鈴木保夫先生、大手前高校の先生方にも協力していただきました。実際に研究を進めていくと、足首の被毛部の特徴や、足指の形状からアシカ属であるということが確定できました。
また本校に残っている写真などの歴史的資料からニホンアシカである可能性が高いこともわかりました。さらに、岸和田高校、大手前高校にある、すでにDNAで同定されたニホンアシカに酷似していることからも、ニホンアシカの可能性が高いと考えました。
⽣徒の発表スライドより
その後、甲能先生を通して産業総合研究所で撮影していただいたCT画像から犬歯を用いてニホンアシカだと確定させようと考えましたが、本校の標本には犬歯が残っておらず、確定することができませんでした。
産業総合研究所で撮影されたCT画像
しかし、私たちは、甲能先生のご意見からヒントを得て、実際に測定した、残っている歯の小ささや体長の小ささから、「新たな可能性」として本校標本は「胎児」ではないかと考えました。また同じく実際に測定した体長から岸和田高校、大手前高校の標本もすべて胎児ではないかという疑問も生まれ、前肢の共通の特徴も含め、これらの一致が何を意味するのか、さらに興味が広がりました。
現在、校内で掲⽰されているポスター
現在、本校標本は国立科学博物館の筑波研究施設に出張中で、今後DNA分析などさらに調査が行われる予定です。