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9月15日(日)日本地震学会・京都大学防災研究所の一般公開セミナーに参加してきました

9月15日(日)日本地震学会・京都大学防災研究所の一般公開セミナーに参加してきました。


このセミナーは、京都駅近くのキャンパスプラザ京都でこの日に開催され、テーマは、「平成の大被害地震を振り返る」で、3人の先生から、1995年の兵庫県南部地震、2011年の東北地方太平洋沖地震、2016年の熊本地震という、平成の時代に日本で大きな被害をもたらした3つの大地震を中心にした講演と、質疑応答などがありました。



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日本地震学会の山岡会長(名古屋大学大学院教授)のご挨拶の後、最初の講演は、京都造形芸術大学の尾池和夫学長(京都大学 第24代総長)でした。演題は「1995年兵庫県南部地震と西南日本の地震活動期」というもので、来年が発生後25年となる兵庫県南部地震について、1974年に神戸で地下直下地震の恐れがあることが神戸新聞の1面トップで書かれ、同年の神戸市の報告書には「活断層群の実在するこの地域で将来都市直下型の大地震が発生する可能性があり、壊滅的な被害を受けることは間違いない」との記載がありながら、安全神話の中で備えをすることなく忘れられ、6千4百人を超える死者を出したことや、東北地方太平洋沖地震に関しては、同規模だったと思われる869年の三陸海岸沖で起きた貞観地震が、多賀城から京都に伝えられたことが祇園祭の起源になっていること、明治時代1889年熊本地震で熊本城の石垣が崩落し修復した場所が、2016年熊本地震でも崩落していることなど、豊富なスライドと豊かな知見、思わず聴き入る話術でお話を展開されました。


「前兆地震は、同じ場所で集中的に起こる」や、「活断層運動が盆地や平野を産み出した。したがって大地震は大都市の直下に起きる。」、「起こるかもしれない南海トラフ巨大地震ではなく、南海トラフ巨大地震は必ず起こる。」など、記憶に強く残るお話がありました。西暦800年代にはマグニチュード7以上の地震が多く起こっているが、1995年〜2050年はそれと同様の次の活動期になっているというお話もあり、尾池先生ご自身が「2038年南海トラフの巨大地震」という本も書かれ、2038年12月に南海トラフ巨大地震が起こるという予測の下で、死者をゼロにすべく津波被害に備えることを政治家にも訴えていると話されました。尾池先生にはこれ以外にも多くの著書があります。是非、読んでみようと思いました。


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続いて講演をされたのは、東北大学大学院理学研究科の松澤 暢 教授でした。演題は「東日本大震災が地震学に与えた衝撃と教訓」というもので、地震の破壊の伝播(すべり)の方向と速さ、地震のエネルギーとマグニチュードの関係から説き起こし、2011年の東日本大震災の特徴についてお話をされ、多くの前震がありながら、2011年の東北地方太平洋沖地震を予見できなかった理由について、「①情報不足、②慢心、③思い込み」(東進ハイスクール林修先生による「歴史上で戦に負けた人物の3つの共通点」と同じ)というお話もありました。東日本大震災の教訓として、①人は災害を過小評価しがち=自分や親・祖父母の経験から判断、正常化バイアスに囚われやすいこと、②研究者はシンプルな美しいモデルを追及しがちだが、例外事象こそが災害軽減には重要、③何が起こりうるのか、あらゆる可能性を検討して、重みつきで社会に説明することが重要、人間ドック同様に予想もしない事態も生じる、ということを挙げられました。


最後に登壇されたのが、京都大学防災研究所の西村卓也 准教授でした。演題は、「西南日本の地殻変動と熊本地震」でした。


西村先生からは、顕著な前震運動を伴った2016年熊本地震について、1995年兵庫県南部地震とのサイズ比較、その余震域がよく似ていることのお話から始まり、豊富な写真を使って、熊本地震が、要注意でマークされていた場所に起こった地震であり、地表地震断層などの特徴について説明がありました。
続いて地殻変動と地震の関係について、弾性反発によってひずみが生じることが地震に密接に関係していることのお話から、現在最先端の地殻変動の観測方法であるGNSSや、地殻変動の基盤観測網であるGEONET、京都大学防災研究所独自の観測点などについて話され、西日本の地殻変動が、2011年の東北地方太平洋沖地震以降にひずむ方向が変わりつつあること、内陸にひずみが集中するメカニズムの説明がありました。熊本地震の直前に、ひずみ集中帯のことが、ブロックモデルとともにテレビ番組(2016年4月3日(日)NHKスペシャル午後9時~「巨大地震MEGA DISASTERⅡ」)で取り上げられていたために、西村先生が「地震予知」していたのか、と聞かれることがあるそうですが、理論通りの所に起きたということであって、発生の時期が分かっていた訳ではなく、予知ではないと説明されました。現在の西日本のブロック間の相対運動の解説の後、関西の住民が注意するべきこととして、西暦800年以降の西日本の内陸地震の発生時期は、南海トラフ地震の前50年と後ろ10年に集中していること、そのメカニズムもわかっており、次の南海トラフ地震が近づいているいま、内陸地震についても警戒が必要と話されました。
最後に、最近ウェブを使ったりして地震予知を有料で提供する民間のビジネスの氾濫が目につくが、予想を乱発した上で中小地震を的中させたと主張しているものが多く、熊本地震の予測も成功しておらず、占いの類いを超えるものではないので、注意が必要というお話もありました。
地震研究者の最先端の研究においても、地震発生の地域の予測は高度化が進んでいるが、時間は予測しきれないというのが正しい認識のようです。


予測に頼らず、日頃の備えをすることが肝要ということが、良く理解できました。今後も、日本地震学会の情報を参考にしていきたいと思います。



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セミナーの最後のご挨拶には、京都大学防災研究所の橋本 学 所長が立たれ、最近の30年で、それ以前に教えられてきたことの全てが崩れたことや学者が裏切られ続けたことがあったが、これは、サイエンスの進歩の過程であると感じているというお話しとともに、災害というものは守りが最も弱い所がやられるものなので、地域の弱点をちゃんと把握して行動をすることが大事であると結ばれました。肝に銘じたいと思いました。


ありがとうございました。


再来週の9月26日(木)には、牧野高校の1年生の「総合的な探究の時間」の『防災』に関する第2回目の特別講義で、地震に関するお話しを、この西村卓也 准教授にお願いしています。今回の講演をお聞きして、ますます待ち遠しくなりました。

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