10/8(火)78期オータムセミナー

 78期2年生を対象にオータムセミナーが行われました。オータムセミナーは、入学当初から「茨高生になる」をテーマに取り組んできた授業や行事を経て、「受験生になる」という次のテーマへと移行する分水嶺として位置づけられている行事です。2年生にとって、現在取り組んでいる課題研究(探究活動)や、卒業後の自らの学び(進路選択)、さらには将来の生き方までを考える貴重な機会となります。

 今年度も九州大学名誉教授である石野良純先生にご講演いただきました。石野先生は、本校卒業生で、ノーベル賞受賞者候補に選ばれるなど、ゲノム編集の第一人者です。ご講演のあと、生徒からの活発な質疑応答にも、丁寧にご回答下さり、有意義な時間になりました。

 前期の間、準備してきた2年生セミナー委員の感想です。

●「分水嶺」「受験生になる」

 今回のオータムセミナーは、この言葉と真剣に向き合うきっかけになったと思います。合格者の手引きに登場してから1年半、心のどこかに、この言葉が存在しました。しかし、それは、充実した日々を過ごす中で、(私にとっては)ずっと向き合いたくない存在でもありました。

「分水嶺」とは、異なる水系の境界線を指す地理用語であり、分水界をなす山の峰(みね)のことです。つまり、雨水が降って、2つの方向に流れていく中心となる場所です。このことから転じて、『物事の方向が決まる分かれ目』のことを意味するようにもなりました。茨高生活にあてはめると、「『私達』の『進路』が決まる分かれ目」となります。1年半を経て、私たちは、ついに自らの進路を決めるため、自己実現の努力を始める地点に到達したということなのでしょう。これを言い換えると、『受験生になる』ことを意味します。

 私たちの多くが、厳しい受験勉強を経て、茨木高校に入学したと思います。高い壁を乗り越えて、ようやく手に入れた楽しい学校生活を1年半で手放すことになってしまうのかと思うと、『分水嶺』『受験生になる』という言葉を聞くと、気が重くなるのは必定です。『受験勉強』が大変であることはわかりきっているのに、それらが迫ってくるという現実を見るのはとてもつらいなぁと悲観的になっていました。そして、明確なビジョンもないのに、『大学に行ってどうしようかな...』などと少し思い詰めてしまっていました。

 しかし、今回、茨木高校28期という私たちの大先輩である石野良純先生のお話を聞いて、少し考えが変わったような気がします。先生は、ノーベル賞候補として高く評価された「CRISPR/Cas9」という遺伝子編集技術の礎となる「CRISPR」を発見。(好熱性などの)Archaeaに着眼した、日本では類を見ないArchaea生物学の確立。これらだけにとどまらず、世界を変える偉大な発見をされた石野先生が、生物学の道に進んだキッカケが、高校時代の教科書の1ページにあった。そんなお話を聞いて、『いつ、自分が興味をもてるものが現れるかはわからない』という大切なメッセージを受け取った気がします。『焦らなくていいんだな』ということに気づくことができました。

 また『le hasard ne favorise que les esprits préparés』というパスツールの言葉はとても印象的でした。この言葉は、「幸運や発見は地道な努力や『好き』という純粋な知的好奇心がないと舞い降りてはこない」という意味を表しています。

 ここで、私は気づいたのです。先程述べた『分水嶺』『受験生になる』という言葉は、大学生活で、新たな「発見」をするために最低限必要な心構え、つまり、『le hasard ne favorise que les esprits préparés』を教えてくれる存在なのではないかと。『受験生になる』とは『勉強漬けになる』ということではなく、『自分の興味をつきつめ、没頭すること』であり、そのために勉強が自然についてくるのではないかと。 

 『Let It Be』 ― 流れに任せつつ、様々なところにアンテナをはる。そんな姿勢を学び、のこりの1年半も様々なものから刺激を受け、自身を変化させていこうと思います。」

(78期セミナー委員)

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