一昨日、10月19日(土)午前に、1年生を対象とした「OB・OG講演会」を開催しました。1年生が本校を卒業した先輩から「職業について先輩が語る」をテーマとした講演を聞き、今後の自分の進路について考えるきっかけとすることを目的としています。
1年生は現在、来年度からの文理選択および科目選択を考えているところであり、昨年度から、この時期に「OB・OG講演会」を開催しています。
今年度は、国土交通省勤務、税理士、弁理士(医療機器・精密機器メーカー勤務)、アパレルオーナー、ディレクター(NHK)、弁護士、航空機パイロット、医師、経営者(IT)として活躍されている9名の卒業生に講師をお願いし、9会場に分かれて講演いただきました。例年、生徒たちの進路希望を考慮しながら、幅広く、かつバランスよく講演を設定しています。今年度来ていただいた9名のうち7名は昨年度もお願いした方です。3年連続という方もいますが、毎年、生徒たちに伝えたいことを考え、話す内容を整理・工夫いただいています。
生徒は事前に教室掲示した講師紹介を確認し、受講したい講演の希望を提出します。一部、第1希望と第3希望になった生徒もいたようですが、基本的に第1希望と第2希望の2名の方の講演(1講演1時間×2講演)を聞きました。
私は昨年度、短い時間でしたが、すべての講演に入らせていただきましたので、今年度は新たに講師としてお招きした国土交通省勤務、航空機パイロットの方の講演に入らせていただきました。
最初に国土交通省勤務の方による講演を聞きました。京都大学工学部を卒業後、国土交通省に入省。講演ではまず、専門技術をもつ外交官として2021年から3年間、イラン日本国大使館に行った時の話しがありました。業務内容は「イランの水問題」と「アフガン難民問題」の情勢分析とのことでしたが、イラン・イスラム共和国について、資料を読むだけでは分からない、実際に行ったからこそ分かる具体的で深い話しをしていただきました。とても興味深い内容でした。富士山よりも高い5700mの山に登山した際の動画も見せていただきました。特に、イラン・イスラム共和国には2つの大きな山脈があり、人の流れを分断しているという話しや、そうした地形を要因とする「水問題」には説得力がありました。「アフガン難民問題」では、アフガニスタンにおける麻薬の栽培の話し、その背景やそれに関わる詳しい話しもしていただきました。時には質問を投げかけながら、まるで授業をしているような様子で、生徒たちも興味を持って真剣に聞いていました。
現在は淀川河川事務所で防災の業務なども担っているとのことです。いくつもの関数により河川の氾濫予測を行うシステムでは数学や物理での学びが活かされているという話しがありました。また、淀川舟運復活をすすめる「淀川クルーズ」にも取り組んでいるとのことでした。舟運は地震などで陸路が寸断された場合にも利活用できる貴重な運搬手段であるとのことでした。
そして最後に生徒たちに、「目標を持つこと-ビジョンの重要性-」と「何でもやってみること-経験は財産-」という言葉とともに、「5年ぐらい先を見て、何をしなければならないかを考えることが重要」、「迷ったらやる。高校でしかできないことがある」ということを伝えていただきました。また、自分自身は1年生のときハイレベル講習の80名に入れなかったことや、野球部と勉学との両立、3年の体育祭での後悔など、入学時の学力よりも、3年間でどれだけ学習を積み重ねたかが重要だという話しがありました。
次にパイロットの方の講演を聞きました。神戸大学を中退し、航空大学校に入学。ソラシドエアに入社し、6年間の副操縦士を終え、現在は機長として羽田空港をベースにお客様を安全に目的地に送り届けているとのことです。航空大学校に入るまで、航空大学校での生活と操縦士の免許取得まで、そしてソラシドエアに入社してからのことなどを中心に、パイロットになるにはという内容を、丁寧に分かりやすく教えていただきました。
私が印象に残ったことについてお伝えします。1つめは夢を実現した実行力です、パイロットは父親の夢であり、その夢を子どもに託されたそうで、幼稚園の頃からパイロットになりたいと考えていたとのことです。本校卒業後、神戸大学に入学し中退していますが、それも航空大学校に入るための手段であり、当初からの計画どおりとのことでした。パイロットになりたいという夢を持ち続け、強い気持ちを持って計画的に行動し、夢を現実のものとした実行力はすごいと感じました。
2つめは講演の最初に話しをされた言葉です。「皆さんはどうしたらパイロットになれるか知っていますか」から始まり、「未知=不可能」という言葉が伝えられました。すなわち、「知らないことが原因で、あきらめてしまっている」ということです。講演の中では、岸和田高校に合格した皆さんなら学力の面では大丈夫、英語も専門用語が中心であり、英検2級程度で大丈夫といった話しを繰り返しされていました。確かに私自身も、パイロットになるのは難しいし、無理だと考えていました。「無知ほど怖いものはない」という言葉があてはまるのでしょうか。
最後に、私にとっては今更ですが、パイロットという職に対する憧れを持ったことです。多くの人の命を預かる重く責任のある職業で、操縦桿を握っているときの緊張は計り知れないものがあると思いますが、その分、やりがいのある仕事だと思います。加えて、年収や休暇などにおいては、他の職業とは比べ物にならないほどの好待遇であると感じました。もちろん、パイロットになるまでが大変だからこそ、そういう条件になるのではありますが。講演を聞いた生徒の中にも関心を持った人がいるのではないかと思います。
私が今回聞いた2つの講演は自分にとって身近でない分、新たな発見がありました。1年生の皆さんは講演を聞いてどのような発見があり、どのように感じましたか。自分のやりたいことを早く見つけて、それを実現できるよう、目標を持ち計画を立てながら高校生活を送ってほしいです。やりたい気持ちが強いほど、そこに向かう行動力も大きくなります。また、スタートが遅れたことによって、目標に到達できなくなることがあるかもしれません。
ぜひとも、先輩たちからの声を真摯に受け止め、自らの目標に向かって、楽しく充実した高校生活を送ってほしいと願っています。
最後になりましたが、9名の卒業生の皆様にはお忙しい中、後輩である本校生徒のためにご来校いただき、お話しいただいたことに感謝します。今後とも、よろしくお願いします。