2月6日(木)6限の時間帯に、2年生を対象としたSSH講演会を岸高ホールで開催しました。今年度も大阪医科薬科大学一般・消化器外科医の河野恵美子先生にお越しいただき、「人生は一度きり。まずやってみなはれ」という題で、ご講演いただきました。
今回は「ドラゴン桜」の話しから始まりました。元暴走族の桜木弁護士が5年以内に東大合格者100人出すことをめざし、私立高校の教育改革をすすめるという内容の漫画です。その桜木弁護士の言葉、「東大はプラチナチケット、旅(受験)の初めは大変だが、後には見事な絶景と快適な列車が待っている。」を引用した話しがありました。グローバルリーダーズハイスクールの生徒として、高い目標、高い志をもって取り組んでほしいというメッセージが込められていました。その際、厳しい世界であるため、見事な絶景が待っているかどうかは自分次第といった言葉も付け加えられていました。
その後はご自身の半生についてお話しがありました。高校では部活動ばかりで勉強していなかった。友達の看護師になるという話や、1人でも生きていける仕事ということで看護学部にすすんだ。そして20歳のときに交通事故に遭い、4か月入院し、世界一不幸だ、死にたいと思っていたところに、友達のお葬式に行ってきた友人から「生きているだけよいではないか」と言われたことをきっかけに、後悔しないような生き方をしたいと思い、患者を経験した人間が看護師を経て、医師になったら素晴らしい医療ができると考え、医師をめざすことにしたそうです。
その医師になりたいとの思いから、ご本人いわく偏差値「38」から、国立の医学部に入るために、必死で頑張ったそうです。その夢を現実にするための河野先生が立てた4つの「STRATEGY(戦略)」を教えていただきました。①常識にとらわれない。成功のイメージを常に持つ、②戦略を立てる、③効率は大事、④これだけやって駄目なら仕方ないという領域までやる。成功するまでやり続ける。です。
確かに、高い目標を達成するためには、戦略が必要だと思います。生徒の皆さんにも、この4つの戦略を参考にしながら、自分の現状を把握し、目標とする大学を定めて、そこに到達するためにはどのような行動を起こすべきなのか、自分なりの戦略を考えてほしいと思います。
外科医となった後、出産し、子どもが1歳となり復帰しましたが、当時は「24時間365日働けない」という理由で執刀させてもらえないような環境で、後輩の女性外科医2人が出産の後、辞めてしまい、続けたいのに続けられない人を二度と出したくないと、女性医師としての活動を始めたそうです。
平成23年に「外科医の手プロジェクト」を発足し、手術器具の研究を開始します。これまで使われていた手術デバイスは重く、ハンドルサイズが大きく、動作が固いなど、女性にとっては使いにくかったからです。それを改善するため、女性の視線から英語の論文を書いてアメリカのメーカーと交渉したことにより、平成24年には日本人初の女性のボイス・オブ・カスタマー(VOC)に選ばれています。そのことについて、「見る角度で世界が変わる」という言葉を使われていました。
その後、先生の弟がすい臓がんで亡くなられたこともあり、患者のために役立つ研究・開発に専念することを決められたとのことです。
女性医師における男女共同参画の活動を10年以上継続して行った功績が評価され、内閣府男女共同参画局「令和2年度女性のチャレンジ賞」を受賞されています。また、令和4年には外科手術件数の男女格差を実証する論文を発表したことで、令和5年7月に日本消化器外科学会が男女の執刀数を定期的に検証し格差を是正していくとする「函館宣言」を採択したとのことです。そして令和6年度には、会長を務める「AEGIS-Women(消化器外科女性医師の活躍を応援する会)」が、内閣府男女共同参画局の「令和6年度女性のチャレンジ支援賞」を受賞されました。令和2年度の個人での受賞に続いての受賞となりました。
交通事故に遭ったことから医師になろうと医学部入学をめざし、実際に医師になっただけではなく、出産してから女性医師としての活動を始め、手術器械の研究開発や外科医としての男女共同参画の実現に取り組まれてきたことには感心させられるばかりです。
これらのご自身の話しを踏まえ、後半では生徒たちに多くのメッセージを発信していただきました。「やってきたことを信じる。自分自身を肯定する。」、「自分でルールをつくる側になる。」、「自分の夢を現実にするために、一歩踏み出す勇気をもつ。」、「失敗して違う道にいっても、方向転換しても可能性だらけである。」、「失敗してやめたら失敗になるが、何度でもやって成功すれば成功となる。」、「人生何があるか分からない。自分で自分の可能性を潰したらあかん。」、「夢がないという人も恥じることはない。」、「やりたいと思ったらやってみる。一歩踏み出せるかどうか。やったことに対する後悔は小さくなっていくが、やらない後悔は大きくなっていく。」、「人生思ったより短い。いつかやろうと思っていると何もできない。人生やり切ったと思えるようにしてほしい。」、「負けたら終わりではない、やめたら終わりである。」などのメッセージです。前半の先生ご自身の話しを聞いた後だけに、これらの言葉はまさしく河野先生の生き方だなということを実感でき、とても説得力が感じられました。改めて、生徒たちには、自分の可能性を信じて、一歩踏み出す力(勇気)を持ってほしいと思いました。まさしく、講演のタイトルどおり、「人生は一度きり。まずやってみなはれ」だと思いました。
講演が終わった後の質疑応答において、硬式野球部の生徒からの目標達成に関する質問に対しては、「自分自身の目標と現状にはどれぐらいの乖離があるのか。その乖離を埋めるために、具体的にどのようなことに取り組むのか計画を立て、実践していくことが必要である。毎日努力するといった漠然としたことでは達成することはできない。」、「チームで目標を共有するとともに、チームとして今何をしたらよいのかを具体的に考えることが大切である。」、「試合に負けた結果(敗因)を分析し、勝つために何をするのかを考える。そこに向かって努力する。一歩前に踏み出すことが重要。」との話しをいただきました。これらのことは野球のことだけでなく、大学受験などにおいても同じだという話しもありました。
河野先生には私が校長となってからずっと講師をお願いしており、今回が3回めとなります。先生の子どもさんも高校3年生ということもあり、とても熱く生徒たちに語りかけていただいています。聞いている生徒たちには講演の内容を自分事として受け止め、意識を高め、そのとおりだと考えたことについては速やかに行動に移してもらえることを願っています。共感力と実行力が重要です。
河野先生、どうもありがとうございました。今後とも、よろしくお願いします。