73期卒業式 式辞

昨日の卒業式の式辞の骨子を紹介いたします。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

みなさんの卒業後の「生き方」について考えたいと思います。

今回のコロナ禍でも私たちが経験したとおり、これからの時代は、世界が一丸となって新たな課題を解決することが求められる時代となります。既存の知識をたくさん持っていることだけで、課題を乗り越えることのできた時代は終焉を迎えているといっても過言ではありません。

未来を担うみなさんには、課題を見出し、その課題を解決するために、必要な知識を選択し、自分の考えを構築して、人々と議論しながら、周囲の人々を巻き込み、行動に移していくような、そんな「学び」を継続することが求められています。

 このような時代を生きるために、大切にしてほしいことを五つ示します。

 まず、一点目は、「学び続けること」そして、「学び」に対して謙虚であることです。アインシュタインによると、「学べば学ぶほど、自分がいかに無知であるかを思い知らされる。自分の無知に気付けば気付くほど、より一層学びたくなる。」のだそうですが、まさにその通りだと思います。自分の無知を自覚して、謙虚に「学び」に向かってください。

二点目は、「遊び心」であります、オランダの歴史学者であるヨハン・ホイジンガは、人間の存在をラテン語で、「ホモ・ルーデンス」であると主張しました。「ホモ・ルーデンス」とは「遊ぶ人」のこと。遊びの要素が文化を創造することの根源であると主張しています。苦難に直面したときにこそ、この遊び心をもち続けて欲しいのです。

三点目は、今の社会はIT化が進み、何でも可視化される世の中です。だからこそ、可視化できないものの価値を知っていてほしいと思います。目に見えることだけでなく、人に知られなくても黙々と努力する行動に私は敬意を評したいと思うのです。サン・テグ・ジュペリの「星の王子様」の中に、フランス語で"On ne voit  bien  qu'avec le coeur""L'essentiel est  invisible pour les yeux"という一節が出てきます。日本語に訳すと、「心で見なければよく見えない。大切なことは目には見えない。」となります。どうか、心で物をみるという感性を養ってください。

四点目は、もし失敗をした場合にどうするかです。「君子は豹変す」という言葉がありますが、この言葉の意味を皆さんは誤解していませんか。最近よくこの言葉を「自分の都合により態度を一変させる」というように誤って使われることもありますが、本来の意味は、「立派な人は過ちに気づくとすぐにそれを改めるということ」なのです。そういう人であってほしいと思います。

最後に、「ノブレス・オブリージュ」です。「ノブレス・オブリージュ」 ― この言葉は、直訳すれば「貴族の義務」という意味ですが、私は、「豊高生に求められる、義務としての幅広い努力」と翻訳したいと思います。繰り返します。「豊高生に求められる義務としての幅広い努力」です。みなさんの多くは、これから専門領域を深く学ぶことが多くなるわけですが、自分の専門領域以外の学問やスポーツ・芸術などにも興味をもって、幅広く教養を広め、培った能力を社会に還元してください。今の自分に満足しないで、幅広く努力することが豊高の卒業生には課せられているのです。これが豊高生の「ノブレス・オブリージュ」であります。

キーワードは「自分の無知を知り謙虚に学ぶこと」、「ホモ・ルーデンス」、「目に見えないものを心で見ること」、「君子は豹変す」、「ノブレス・オブリージュ」の五つです。

結びに、私は41年前に豊高を卒業した32期生としてお願いをしたいことがあります。それは、豊高で出会った友人や先生方との絆をこれからも末永く大切にして欲しいということです。卒業後も、どうぞ母校を訪ねてきてください。私たちはいつでもみなさんを歓迎します。

豊中高校は100周年を迎えます。その節目の年に向けて、みなさんの母校豊中高校がさらに発展するよう努力することを誓い、私の式辞といたします。

DSC02256.JPG