ライフ・ワークバランス

 教職のブラック問題、教員志望者の減少、担任不在や講師の確保ができない等々、今学校を取り巻く状況は今までと比べものにならないくらい厳しい。働き方改革の推進を求められると同時に、これまで受け継がれてきた学校文化は、一朝一夕では変えられるべくもなく、急激な変化は、速攻、教育の質に跳ね返る。それはつまり、生徒の不利益となる。そう思うと、教員というものは、なかなか割り切れない。割り切ろうにもそれを許す環境も整備されていない。学校への要求はここ数年、とてつもないスピードで増大している。新学習指導要領が求めるもの、GIGAスクール構想、新型コロナウイルスによる学校教育への影響への対応(不登校はもちろんのこと、生徒の心身への影響にいかに対応していくか等々)など、課題は山積である。そして、それらのことに真摯に対峙しようとすればするほど、時間のなさ、人の不足、施設の不十分さなどに突き当たり、疲弊していくという悪循環。

 数年前に、「逃げるは恥だが役に立つ」というガッキー主演のドラマがあったが、その中で、主役のガッキーが「愛情の搾取」というようなことを感じて、もやもやするという場面があった。今、学校では、「やりがい搾取」が大きな問題となっている。「教師なら当然、やりがいを感じてやりとげるべき」と周囲はもとより、教師自身が思い込み、自分を追い込んでいく。そうなるとライフ・ワークバランスなどどこの話?ということになる。

 あくまで、仕事に真摯に取り組む、生徒のことをちゃんと見ている、後ろではなく前を見て考えていく、自分のやりたいことだけ・自分がいいと思うことだけに固執しないなどは大前提のこととして、学校現場は、「やりがい搾取」が常態化すればするほど、蝕まれ、その結果、教育の質は下がっていくことは、自明のことである。

 どうしたら現状を変えることができるのか?これだけ多くの人たちが問題意識を持ち、議論を重ねているにもかかわらず、なかなか出口が見えないのはどうしてなんだろうか?「答えのない問い」に日々向かい続けている。