入学式の式辞です

遅れましたが、入学式の式辞を紹介します。

本日、ここに、豊中高等学校第六十六回入学式を挙行するに当たり、教育委員会ご代表恩地様、PTAご代表藤原様をはじめ、保護者の皆様のご臨席を賜り、心からお礼申し上げます。

ただ今、入学を許可いたしました新入生諸君、入学おめでとう。このたびの豊中高校の入試は、文理学科は3.8倍、普通科は1.8倍と、豊中高校にとって、これまでにない最高の競争率でした。諸君は、この難関を見事に突破され、本日、晴れて豊中高等学校の生徒となりました。これは、皆さん一人ひとりの努力の成果であることは勿論でありますが、同時に、ご家族や小学校・中学校の先生方や塾の先生など、多くの方々の温情と声援に支えられて得ることができた栄冠であります。お世話になった方々への感謝と今日の感激を忘れることなく、これから精進していくことが皆さんに与えられた使命であることを、肝に銘じてください。

さて、本校は大正十年に大阪府立第十三中学校として創立以来、今年は創立九十周年を迎えます。

諸君には、豊中高校の歴史を是非、知ってほしい。本校の正門は昨年八月に、同窓会の寄附により、新しく改装されました。門の傍にある大きなヒマラヤ杉は、豊中高校が創立以来、豊中高校の歴史を見守ってきました。校門を入って右側の建物の中に本校の歴史を展示した豊陵資料室があります。資料室には本校の卒業生の方がおられ、詳しく説明してくださいます。今日は開いているので、生徒だけでなく保護者の方も時間が許せば、ご覧ください

 卒業生には、多くの各界のリーダーがおられます。小林米三阪急電鉄元社長、鳥井道夫サントリー元名誉会長、文化功労者では、心臓移植外科の川島康生国立循環器病センター名誉総長とX線天文学の権威、田中靖郎東京大学名誉教授がおられます。大学関係では、津田塾大学の飯野正子学長、諏訪東京理科大学の河村洋学長をはじめ東大や京大、阪大の教授として多数の方々が活躍されております。芸術の分野でも、「動く芸術」で世界的に活躍されてます新宮晋(すすむ)さんがおられます。関西国際空港の天井にある「果てしない空」という作品は、新宮さんの作品です。本校中庭にある「風と光」という作品もそうです。みなさんは、このような素晴らしい先輩がいる伝統ある豊中高校で学ぶのです。豊中高校生としての誇りを持ってください。それには、まず校歌を覚えてください。豊中高校の校歌は、有名な詩人、北原白秋作詞、そして日本を代表する作曲家、山田耕筰作曲です。当時の黄金コンビによって作られた豊中高校の校歌は、全国でも数少なく、貴重な校歌と言えます。つぎに、制服です。この制服には、豊中高校の歴史が詰まっています。それにふさわしい品位ある着こなしをしてください。

 さて、この四月一日から、進学指導特色校、別名グローバルリーダーズハイスクールがスタートしました。諸君は、言うならば、その一期生であり、大阪府民だけでなく全国から注目されています。その目標は、グローバルリーダー、すなわち、世界を舞台に活躍するリーダーの育成です。諸君には、これから、高い「志」と高い進路目標をもつことを求めていきます。高い「志」とは、諸君一人一人が将来、自分のめざす分野で、リーダーとして社会に貢献するという意志であります。現在、東日本大震災で多くの犠牲者が出ており、被災地では厳しい条件のもとで避難生活を送られている方がたくさんおられます。本校では、一刻も早い被災地の復興を願い、生徒有志や生徒自治会、そして吹奏楽部による募金活動が行われています。このように生徒が自ら考え、行動することが、高い「志」をもつことにつながるものと思います。

次に、高い進路目標とは、「志」の実現に向けて大学進学をめざし、第一志望をもつことです。第一志望合格に向かって、できるだけ早いスタートを切ってください。そのために、何から始めるか。「隗より始めよ」という故事にあるように身近な所から始めることです。

これから、三つ申します。

第一は、毎日の学習から始めることです。諸君は、この一年間、受験勉強に集中してきたことと思います。高校入試合格をめざして、答えのある問題を正確に解くという学習が中心ではなかったでしょうか。

高校では、もちろん知識を身に着けることが求められますが、考えることが、これまで以上に求められます。効率的に知識を覚えるという作業だけでは、本当の実力は付きません。答えを出すのに時間をかけて考えることが要求される問題、さらに言えば「答えのない問題」にも取り組むことが要求されます。また、読書も非常に大切です。読解力をつけるためだけではなく、読書を通して物事を考えることによって、思考力を高め、物事の判断力を磨くことにもつながります。月に少なくとも一冊は読んでほしい。一見、時間のかかる非効率とも思える、これらの学習が、実は大きな土台となるのです。大学入試のためだけではなく、その先にある「志」・夢の実現に向かっての学習であると考えてください。

第二は、進学指導特色校の行事や活動に、積極的に参加してください。大阪府は、進学指導特色校10校に、今年度、総額1億5000万円という予算を組んでいます。また、国からは、本校のスーパーサイエンスハイスクール事業実施のために、5年間で約7000万円、今年度は1300万円が充てられます。諸君には、これだけ多くの期待が寄せられており、それに応える成果を求められています。

今年一年間の主な行事としては、四月十一日には十校共通テストがあります。七月には勉強合宿、八月には京都大学、大阪大学の見学・研究室訪問、九月には職業別進路講演、十月には豊中高校創立九十周年式典を予定しています。その他、ほぼ毎週の土曜講座・講習があり、さらに希望者対象の奈良歴史文化宿泊研修、国際交流、英語リスニング講習も計画しています。諸君の学習への動機づけ、得意分野の発見、進路選択につながる取組です。積極的に参加してください。

また、諸君の中には、これから部活動に入ろうと考えている人もいるでしょう。本校では、部活動は、リーダー育成の場であり、目標に向かって協同して粘り強く取り組むことを学ぶ場と考えており、学校として部活動を支援しています。しかし、学習があっての部活動です。今年度の一年生からは、これまでと異なり、正式入部の時機が6月の体育大会後となります。それまでは、高校での学習方法と家庭学習の習慣を身につけてもらいます。学習と部活動の両立は容易なことではありません。両立ができない人は、学習を第一に考え、入部は慎重に考えてください。

第三は「一人ひとりの違いを認め、支え合い、高めあうクラスをつくる」ことです。男女や国籍、身体的な状況や家庭環境等、様々な違いがあります。他人のことは、自分に関係ないから知らなくなくてもよいでは、豊かな人間関係を築いていくことはできません。人の悩みや苦しみ、喜びを共有できる関係を築いてほしいと思います。そのためには、自ら語り、逆に相手の話を聞き、その立場になって考えることが大切です。一人一人が実践していけば、きっと素晴らしいクラスとなることでしょう。以上、三点を覚えて実行してください。

最後になりましたが、保護者の皆様に一言ご挨拶申し上げます。

本日はお子様のご入学本当におめでとうございます。高校の三年間は、人生の方向を決定する大事な時期であり、悩みの大きい時期でもあります。教職員は、お子様が、自らの生きる道・そして卒業後の進路を、自らが切り開いていけるよう、全力を尽くして参りますが、子どもの健全な成長を望み、豊かな個性を育てていくためには、学校と家庭がそれぞれの役割を果たしながらも、相互に補完し合い、連携を密にしていくことが重要と存じます。どうか、学校の方針をご理解いただき、ご支援とご協力を賜りたいと存じます。以上、私の式辞といたします。

平成二十三年四月八日

        大阪府立豊中高等学校長    髙橋 克夫